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【SS】男の子「クリスマスは今年もやってくる」

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男の子「今夜はクリスマス。今までずっといい子にしてたし、サンタさんもきっと僕にプレゼントを持ってきてくれるよね」

 

男の子「あれ?でも僕の家に煙突はないし、玄関も部屋もカギを閉めちゃっているけど、サンタさんはどうやって中に入ってくるんだろう?やっぱり少しだけ窓を開けておこうかn」

 

ガシャーン!

 

男の子「!?」

 

???「悪い子はいねぇええかぁああ!!!!」

 

男の子「ひぃ!?」

 

サンタ「俺はサンタクロース!悪い子以外にプレゼントをまき散らす職務を全うしている!」

 

男の子「悪い子以外!?しかもまき散らすってそんな汚物みたいな言い方!だいたい職務を全うするとか以前にもっと人として真っ当に・・・」

 

サンタ「うるせぇ!!はっ倒すぞ!」

 

男の子「サンタなのに口悪っ!」

 

サンタ「さて、貴様に問おう。貴様は悪いのか?悪くないのか?」

 

男の子「いや貴様て」

 

サンタ「答えろぉ!まぁ、その返答次第によっては、ただでは済まないからな・・・クックックッ」

 

男の子「それ絶対サンタの言うセリフじゃないよね!?」

 

サンタ「御託はいい!さっさと答えろ!!」

 

男の子「・・・いい子にしてたよ!してたつもりだよ!」

 

サンタ「ほぉ。まぁ、口ではなんとでも言えるだろうな。しかし法廷で重要なのは証拠!そんな証拠はあるのか?」ニヤニヤ

 

男の子「いやここ法廷じゃないんだけど・・・証拠はこれだ!」ビシッ

 

サンタ「なんだこれは?」

 

男の子「これは僕が毎日早寝早起き、宿題、お家のことをサボらずきちんとできた時に〇を記入しているカレンダーだ!今年は1日欠かさず〇が付くように頑張ったんだからね!」

 

サンタ「しゃらくせぇ!!!」

 

男の子「しゃらくせぇ!?」

 

サンタ「だがまぁ、悪いヤツではなさそうだな。貴様にプレゼントの権利を与えてやろう」

 

男の子「権利?いい子だったからプレゼントをもらえるってわけじゃないの?」

 

サンタ「ああ。権利=プレゼントをもらえるという認識で間違いはない。だが、ここから更に倍プッシュをし、2分の1の当たりを引くとプレゼントが2つになる。ただし失敗したらプレゼントは0だ。・・・ひっひっひ!さぁ、どうする!?」

 

男の子「こんなサンタ嫌過ぎる!!」

 

サンタ「さぁ大いに悩めクソガキ!いや、少年よ!」

 

男の子「もうはっきりクソガキって言っちゃってるよ!そして僕はプレゼントは1つもらえたらそれでもう満足だから、倍プッシュなんかしない!」

 

サンタ「ふっ。チキン野郎が。まったく、ギャンブラーの風上にも置けないやつだな」

 

男の子「そんな風上に置かれたくないです」

 

サンタ「はぁ・・・いいか。俺がサンタになったのはな」

 

男の子「なんか語り出した!」

 

サンタ「俺がサンタになったのは、この倍プッシュギャンブルに負けたからだ。あの賭けはそれはもう熱かった、熱すぎた。なんたって勝ったらプレゼントが32個、負けたらその一切がパーになるんだからな」

 

男の子「それで、欲をかいた結果パーになったと」

 

サンタ「ああそうだ」

 

男の子「でも、それとサンタになったのとはどう関係があるの?」

 

サンタ「当時の俺は、どうしてもプレゼントが0になることが許せなかった。だから、あいつが出してきた条件を飲んだんだ」

 

男の子「条件?」

 

サンタ「このままプレゼントが0になるか、それとも、将来サンタとして100個プレゼントを配ることを条件に、本来もらえるべきだったプレゼントを1個もらうか」

 

男の子「それで後者を選んだの?」

 

サンタ「そうだ」

 

男の子「来年もあるのに?」

 

サンタ「不確かな未来をじっと待ってるつもりなんてさらさらなかったんでな。俺にとって大事なのは今その時だ」

 

男の子「なんかカッコ良さげなこと言ってるけど、ただギャンブルで失敗しただけでしょ」

 

サンタ「うるせぇ!とにかく、俺はプレゼントを100個配るまで元に戻れねぇんだ!」

 

男の子「元っていうのがなんなのか分からないけど、プレゼントを100個も・・・ちなみに今何個くらい配ってるの?」

 

サンタ「98個だ」

 

男の子「もうすぐじゃん!わざわざ僕でギャンブルしなくても、次の子にもう1つプレゼントを渡したらそれで終わりなんじゃないの!?」

 

サンタ「いーや!こちとら最後は絶対にお前で終わらせるって決めてんだよ!」

 

男の子「なんでだよ!?」

 

サンタ「お前、物心ついた時から両親がいないよな?」

 

男の子「!」

 

サンタ「あれは不幸な事故だった」

 

男の子「おじさん、なんで知ってるの?」

 

サンタ「サンタってのはなんでも知ってるもんなんだよ。最初からお前のすべてを知っていた」

 

男の子「今時親がいないなんてそんに珍しいことでもないでしょ。どうして僕にこだわるの?」

 

サンタ「お前、親父の顔を見たことは?」

 

男の子「ないよ」

 

サンタ「だろうな。何を隠そう俺は」

 

男の子「まさか・・・まさかだけどおじさんってもしかして、僕の・・・!」

 

サンタ「親父ではない」

 

男の子「違うんかーい!」

 

サンタ「ただ、お前の両親を殺した人間だっていうのは間違いないだろう」

 

男の子「え・・・?」

 

サンタ「今更こんなことを話しても仕方がないことは分かっている。だが、お前には聞く権利があるからな」

 

男の子「どういうこと?僕のパパとママはお酒を飲んだ人が運転していたトラックにぶつかって死んじゃったんじゃなかったの?」

 

サンタ「ああそうだ」

 

男の子「じゃあ!じゃあ、おじさんがあの時トラックを運転していた人・・・ってことなの?」

 

サンタ「違う」

 

男の子「もうわかんないよ!ちゃんと説明してよ!」

 

サンタ「俺がガキの頃にプレゼントを賭けた話をしたよな?あれは、あのプレゼントの中身は命だったんだ」

 

男の子「!」

 

サンタ「あの時サンタが俺に持ってきたプレゼントは、その時死ぬはずだったお前の命だ。そこであいつは、戸惑う俺に向かって、倍プッシュに成功すると「プレゼント=命」が倍に増えると抜かしやがった。お前の命はもちろん、その増えたプレゼントの分だけまだ死ぬべきでない命を救えるってんだから魅力極まりない話だよな」

 

男の子「・・・」

 

サンタ「それでも、やっぱりというか、人間欲張っちまうもんだ。欲張っちまったんだ。俺がもしあの16個のプレゼントの時点でやめていたら、お前の両親も、今頃隣で笑っていたかもしれないのにな」

 

男の子「どうして、どうして僕の命を助けてくれたの・・・?」

 

サンタ「ウキウキワクワクこれからってクリスマスの夜に、目の前で幸せそうな家族が一瞬にして消し飛んじまったんだぜ?そんなの見せられたら、後味悪いったらねぇよな?」

 

男の子「・・・」

 

サンタ「まぁそんなこんなで、最後にプレゼントを配るのは因縁のお前と決めていたってわけだ」

 

男の子「いや因縁って」

 

サンタ「で、どうする?倍プッシュするのか?」

 

男の子「・・・する」

 

サンタ「あん?」

 

男の子「倍プッシュするよ!!」

 

サンタ「よく言った!クソガキ!」

 

男の子「もうクソガキでもなんでもいいよ!それで、2分の1の成功っていうのはどうやって決めるの?」

 

サンタ「それは至ってシンプルだ」スッ

 

サンタ「どちらかの手にコインが入っている。さぁ、右か左か。コインがあるのはどっちだ?」

 

男の子「・・・」

 

サンタ「・・・」

 

男の子「・・・右!」

 

サンタ「本当に右でいいのか?」

 

男の子「うん!!」

 

サンタ「・・・」

 

男の子「・・・」

 

サンタ「・・・」

 

男の子「・・・」

 

サンタ「・・・当たりだ」

 

男の子「やったぁ!!!」

 

サンタ「ふっ、よかったな。プレゼントの権利が2つに増えて。だが、まだまだ倍プッシュすることは可能だ。どうすr」

 

男の子「しないよ。これでおしまい」

 

サンタ「おいおい、つまんねぇやつだなぁおい」

 

男の子「1つ確認なんだけど、2つ目のプレゼントは1つ目と同じものじゃなきゃダメなの?」

 

サンタ「いや、俺はあの時命以外に一切興味がなかったから命=プレゼントと決めていただけだ。クリスマスっぽい平和なものならなんでもいいんじゃねぇか?」

 

男の子「じゃあ、1つはもともとお願いしていたアレで」

 

サンタ「あぁ、お前が生まれた時に両親が作ってくれた唯一無二のオルゴールな。事故で粉々になっちまったが、まぁサンタってのはそんなものでもなんでも・・・ほんとすげぇよな」

 

サンタ「それで?倍プッシュで増やしたもう1つのプレゼントはどうするんだ?」

 

男の子「もう1つのプレゼントは・・・おじさんの命でお願いします」

 

サンタ「はぁ!?」

 

男の子「おじさん、本当はもう死んでるんでしょう?」

 

サンタ「お前・・・」

 

男の子「なんとなく、分かったんだ。おじさんもあの時、僕たちと一緒に事故に巻き込まれちゃったんだよね?それで、その時・・・本当は、僕たちと一緒に死んじゃってて・・・」

 

サンタ「・・・あの時俺はギリ瀕死で生きていたんだがな。まぁだからこそ、あの一瞬でサンタにプレゼントをねだることができたってわけなんだが」

 

男の子「プレゼントを100個配ると元に戻るって言ってたけど、それって死んじゃうってことだったんでしょ?」

 

サンタ「本来あの時失っていた命だったからな。それが倍プッシュに失敗しちまったってのに・・・随分とお釣りが返ってきたもんだ」

 

男の子「ねぇ、サンタさん」

 

サンタ「あ?」

 

男の子「あの時本当は左手の中にコインがあったんだよね?」

 

サンタ「はぁ?それだったら今頃倍プッシュが失敗になっていて何もかも」

 

男の子「僕から見て右」

 

サンタ「!」

 

男の子「僕はあの時、右か左のどちらかを聞かれたから「右」って答えたけど「右手」とは言っていない。つまり、サンタさんが僕の発言を「右手にコインがある」じゃなくて、僕から見て「右側にコインがある」って答えだと解釈をすれば、たとえ左手の中にコインがあったとしてもそれは当たりってことになるんだよね?」

 

男の子「逆にあの時僕が「左」って言っていたとしたら、「左手にコインがある」って答えだと解釈して結局当たりになる。そうなるとあの倍プッシュはあってないようなものだったってことになるけど」

 

サンタ「細けぇことをごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ・・・これは俺なりの昔のサンタへの復讐ってもんだ」

 

男の子「復讐ってそんな。昔のサンタさんもきっと思うところはあったはずだよ。本当はどんどん救える命を増やしてもよかったんだけど、あのままいくとおじさんが無限に倍プッシュで命を増やし続けるから命の価値自体が・・・」

 

サンタ「うるせぇ!なんにしても今は俺がサンタなんだから、どんなルールにしようがどう解釈しようが俺の勝手!俺が正しい!」

 

男の子「なんかおじさんらしいよねw でも、ありがとう。僕に命をプレゼントしてくれて」

 

サンタ「べっつに~?というか、俺は俺でなんか知らんが生かされちまったし、さぁ、これから先どんな人生を送ってやろうかねぇ!」

 

男の子「ふふっ。きっと自分よりも誰かのために必死に生きるんだろうなって思うよ」

 

サンタ「余計なお世話だ!そんなことよりお前、せっかくだからちょっとそのオルゴール聴かせろよ」

 

男の子「うん、いいよ。きっと僕は覚えていないんだろうけど、いや、それでも」カチャッ

 

♪~

 

男の子「クリスマスは来年もやってくる」

 

ー完ー

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