【SS】男「あなたの未来の彼氏です」
ーPM8:00-
ピンポーン
女「はーい」ガチャッ
男「あ、こ、こんばんは」
女「こんばん・・どちら様でしょうか?」
男「あ、えと、うーん・・・」
女「?」
男「決して変質者等の怪しい者ではないのですが、説明すると怪しさしか残らないので・・是非チェーンをかけたそのまま用心しつつお話をお聞きください」
女「は、はぁ」
男「あ、そうだ!これ、僕のスマホと免許証です」スッ
女「へ?」
男「もちろん偽造でなくどちらも本物です、と言ってもそう言えば言うほどに嘘っぽく聞こえちゃうな。うーん、とりあえずお話が終わるまでお預かりください」
女「えーと」
男「大丈夫です。お話を聞いていただくための人質とでも思っていただければ・・もし気にくわなければそのまま返していただかなくても結構なので」
女「・・・」
男「あ!いきなり現れた男に何を言われても怪しさと疑心しか湧かないですよね。なので、身の安全の為、保険としてワンプッシュですぐ110番出来るように準備されておくことを強くおすすめしま・・」
女「ふふっw」
男「!?」
女「ずいぶんとお優しい変質者さんなんですね」
男「いえ!決して変質者というわけでは!」
女「あら、では実際のところあなたは誰なんでしょう?」
男「・・・あなたの未来の彼氏です」
女「え!?」
男「信じられませんよね。下手したらこんなのただのストーカーですし。しかし、せめてお話だけでも」
女「・・・信じます。いえ、信じてみます」
男「!」
女「なんとなく、ですが、あなたは悪い人ではない気がします」
男「・・分からないですよ。もしかするとこうやって油断させておいて、実は凶悪な殺人鬼の可能性だって」
女「ほら、そういうところですよ。本当の殺人鬼だったら、わざわざそんなこと言わないでさっさと殺してますって」
男「なるほど。では、とりあえずはお話を聞いていただけると」
女「はい。ただ、いきなり家に上がってお話するのは怖いので、近くのファミレスで詳しく聞かせてください」
男「ありがとうございます。では、車を近くに停めてますので、そちらで向かいましょう」
女「お願いします」
・・・・
・・
ーファミレスー
男「さて」
女「さて」
男「とりあえず、まずは僕が未来から来た彼氏である証明をするのが先だよね」
女「なんか急にフレンドリーになりましたね」
男「あぁ!ごめん!いや、ごめんなさい。3ヶ月先では恋人同士だったから・・敬語で話し合っていることにすごく違和感があって・・」
女「ふーん。信憑性を増すためにあえてそういう演出をしているんですか?」
男「違います!本当に・・」
女「冗談ですよwそれより、未来って言っても3ヶ月後なんですね。10年後とか、もっと遠い未来からやって来たのかと思いました」
男「はい、意外と近い未来からの過去戻りです。あ、なぜ未来から来たのかという理由は最後にお話しますね」
女「分かりました。でも、その話が本当なら私たちはいつ頃付き合ったことになるんです?」
男「あなたと僕は今から2週間後に出会って意気投合し、そのまま付き合うことになります」
女「へ、へぇ。なんかこうして面と向かって言われると恥ずかしいですねw」
男「僕は彼女であるあなたとこうして赤の他人のように接していることが、なんだか照れるような恥ずかしいような、そんな風に感じますw」
女「なるほど・・・ちなみに、付き合ってる時の私ってどんなでした?」
男「すごくいい人でしたよ」
女「全然具体的な説明じゃないですねw」
男「具体的に話すとなると・・・あー。ベッドの上での話・・とか?」
女「ちょ、やめてください!セクハラですよ!」
男「ははっw過去とはいえ、やっぱりからかいがいのある君のままだ」
女「むー。というか今になってちょっと信じられなくなってきたんですけど、肝心のその証明っていうのはどうやってするんですか?」
男「そうですね。僕がペラペラと何かしゃべるよりも、あなたの質問に応答する方が早いかもしれないですね」
女「なるほど。じゃあ、私の名前、生年月日、職業、好きな食べ物、趣味を教えてください」
男「名前は女、誕生日は6月9日で今年25歳になる。職業は役場の事務で好きな食べ物はおいしいものすべて。趣味はスマホのアプリゲームで、すぐ飽きては新しいものをインストールしてまた飽きては・・を繰り返すタイプです」
女「・・・」
男「・・・」
女「ストーカー、なんですか?」
男「いやいや!未来から来た証明として知っていることを話しただけです!」
女「いやー、でも。じゃあ私しか知らないこととかも知ってるんですか?」
男「あなたが僕やごく限られた親しい人にしか話してないことなら、いくつか」
女「・・・たとえば?」
男「たとえば、あなたが過去に人を殺している、とかですね」
女「!!」ガタッ
男「当たってます?」
女「ひどい・・」
男「はい。あなたから聞いたそのままの言葉でお伝えしました。が、事実は殺人ではなく、ただその人を救うことができなかっただけだ、と、僕はそう認識しています」
女「なんで、そんな・・」
男「さぁ、これで僕が未来から来たあなたの彼氏だという証明はできたでしょうか」
女「・・・」
男「否定しないのであれば、それは肯定の意として受け取ります」
女「あなたが、未来の私の彼氏・・」
男「はい。僕があなたの未来の彼氏です。あ、申し遅れました、男という名前です」
女「男、さん・・」
男「はい。あ、ジュース取ってきますね。いつもの氷なしのオレンジジュースでよかったですよね」スッ
女「は、はい」
女(映画や小説ではよく見るけど、実際にこんなことが起こってるなんて信じられない。いや、そう思いながらも既に受け入れてしまいつつある私がいる。それに、私が過去に人を殺してしまったことを知っているのが何よりも引っ掛かる。でも、男さんはなぜ過去の私の前に現れたんだろう。その理由は最後に説明するとは言ってたけど・・)
男「はい。オレンジジュースとおしぼり」
女「あ、ありがとうございます」
男「うーん。やっぱりなぁ」
女「・・どうかしましたか?」
男「いや、やっぱり敬語で話し合ってるっていうのが物凄く違和感でして・・」
女「確かに、私が逆の立場でも同じことを思うはずです」
男「ですよね!というわけで、以降は未来の僕たちのようにフレンドリーにタメ口で話すことにしよう!」
女「そんな急に・・それに」
男「さっきのこと、まだ怒ってるの?」
女「怒っているというか・・いろんな思考と感情が織り交ざって、変な感じです。でも、そんな過去をあなたに話した・・未来の私を信じます」
男「やっぱり君は強いな」
女「えへへ。よく言われます。 そう言えば、男さんは私のどこが好きで付き合ったの?やっぱり私のこのキュートな容姿?」
男「その域だ!いやー、やっと少し未来に近づけた気がするなぁw」
女「質問に答えてよー」
男「そうだね。容姿とかよりも、君のその雰囲気に惹かれたんだと思う」
女「ほおほお。つまり容姿についてはお気に召されていないと?」
男「そんなこと言ってないってw君はかわいいよ」
女「そんな真っすぐに見つめられながら言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど・・」
男「ははっ。わざとだよ」
女「もう!男さんはいじわるだ!」
男「でも、そんな僕を好きになったのは君なんだよ」
女「うん・・なんか、分かる気がする。あなたのことを好きになった私のこと」
男「へぇ。まさかもう僕のこと好きになってくれてたりするの?」
女「ちがっ!!ただ、興味はあるというか・・」
男「相変わらず素直じゃないねぇwま、そういうところも好きなんだけどね」
女「もう! あ、そろそろなんで未来から来たのか教えてくれてもいいんじゃないの?」
男「そうだね。そろそろ頃合いかな」
女「頃合いって何w さぁ、教えて教えて!」ワクワク
男「僕が未来からここへやってきた理由。それは・・」
女「それは?」
男「君を、殺すためだ」
女「・・え?」
ー完ー
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