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【SS】MENENEオンライン裏技「みなしごピッチを皆殺しパッチに進化させる方法」

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MENENEオンラインとは、古き良き時代と謳われたMMORPG最高峰のゲームである。

モンスターを捕まえ、育て、プレイヤーと共に戦うというゲームシステムは、シンプルかつ当時の流行りに沿った受け入れられやすいものであった。

そのシステムもさることながら、ストーリーも充実しており、先の展開に息を飲んだプレイヤーも多かったことだろう。

 

また、他プレイヤーとの交流システムにも力を注いでおり、チャット、ギルド、モンスター交換、結婚、定期的に開かれる豪華賞品付きの大会等、プレイヤーを飽きさせない魅力が大いに詰まっていた。MENENEオンラインのために学校や仕事を欠勤したり、恋人とのクリスマスを反故する者も現れたりと、多くのプレイヤーが魅了されていたのは言うまでもない。

 

そんな盛り上がりを見せながら、サービスが開始されて2年ほどが経ったある日のこと。

MENENEオンラインにてとある噂が流れ込んだ。

 

ゲーム内屈指の最弱キャラクターである「みなしごピッチ」が、とある条件を満たすことによって最強モンスター「皆殺しパッチ」へ進化するというものである。

 

どこからどのようにしてこの噂が流れてきたのかは定かではないが、噂は瞬く間に全プレイヤーへと広まった。

そして、所謂ランカーと呼ばれるプレイヤー達が情報共有をしながら数多の試行錯誤を行った結果、2年の月日と引き換えにとある結論を導き出した。

 

それは「みなしごピッチを手持ちボックスに入れた状態かつ、他モンスター5体(LV200以上)を瀕死状態にした上で力尽きる」というものである。

他に詳細条件として

①主人公のHPが残り1割以下

②主人公のインベントリが空

③所持金がカンスト(999,999,999,999R)している

④アリスの懐(最上位EXダンジョン)最深部で毒状態で移動しながら力尽きる

上記4つが挙げられる。

 

ある日、当時サーバーランキング3位だった「メリー」というプレイヤーが偶然にこの条件を満たし、奇跡的に「皆殺しパッチ」を発現させることに成功した。

なお、これを成功と呼ぶべきかどうかについては、後の文章を読んだ上で各々で判断して欲しい。

 

こうしてゲーム内最弱モンスター「みなしごピッチ」が、ゲーム内最強の「皆殺しパッチ」へと進化したわけだが、問題はその後にあった。

 

皆殺しパッチがあまりにも強過ぎたのである。

 

その強さの原因は、パッチのハイアビリティ「吸収」そのものにあった。

この「吸収」とは、自身が倒したモンスターのステータス・スキル・アビリティを永続的に自身に付与するという、チートもいいところ、ゲーム仕様上ありえないぶっ壊れアビリティだったのだ。

 

実際、発現した当初のパッチのステータスはすべて※カンストしており、その外見は禍々しく呪いそのものであった。

※ステータス表記は9,999だったが、実際はランキング3位であった「メリー」の手持ちモンスター5体の能力を合算した値であった。

 

そして、パッチ戦闘仕様上一番のネックポイントは敗北時のリスクにあった。

なんと、パッチとの戦闘に敗北すると、今まで積み上げてきた努力の結晶・思い出そのものである大切なプレイヤーデータが消失して(吸収されて)しまうのである。

 

公式はこのイレギュラー過ぎたゲームシステムにて、パッチを不具合と称し、修正が入るまでは絶対に戦闘を行わないようプレイヤーに対して警鐘を鳴らした。

 

しかし、そんなハイチートハイリスク化け物モンスターを前にしてもなお、黙ってはいられないプレイヤー達がいた。

当時のMENENEオンラインランキング1位「Yume」と2位「Kibo」である。

 

彼らは現状最強のモンスター構成かつ大会賞品でしか入手できないレアアイテムを多数所持し、万全の状態でパッチへと挑んだ。

 

しかし結果は言うに及ばず。惨敗であった。

 

それもそのはず、パッチが発現した後、興味本位で特攻していった数多のプレイヤーが吸収されてしまい、パッチのステータスは当初の何倍にも膨れ上がっていたのである。

特攻=死=データ消失と知った上でもなおその眩しすぎる業火に向かって死に急ぐ彼らの姿は、さぞ儚くも美しかったことだろう。

 

これは余談であるが、図らずもパッチの生みの親となったメリーは、例に漏れずパッチの発現と共にサーバー上からデータが消失し「これはある意味引退のいい機会だったのかもしれませんね」と言ってMENENEオンラインから姿を消したのだという。

 

短期間で上位3ランカーが消失したということで、パッチに挑む者は誰もいなくなった。唯一の救いは、パッチが非アクティブモンスターだったということだ。

非アクティブなため、こちらから戦闘を仕掛けない限りその最凶さはさておき一切の無害なのである。

 

以降、パッチはエンドコンテンツダンジョン内における「触れると即死するオブジェクト」として扱われ、この事件は幕を閉じた。

 

MENENEオンライン界に平和が帰ってきたのである。

(運営の「パッチ戦敗北=データ消失」仕様だけを取り除いた対応を見ると、ゲーム内の予期せぬいいスパイス・タブーとしてパッチを扱っているたのかもしれない)

 

しかし、そんな穏やかな時間もそう長くは続かなかった。

 

なんと、この一連の出来事を重く受け止めたのであろうMENENEオンライン公式運営が、ついにその重い腰を上げたのである。

 

大告知イベント「悪魔への鎮魂歌」と称して、

運営が操作する最強チートキャラクター&モンスター5匹をもって、皆殺しパッチ討伐をリアルタイムで行うという前代未聞のライブイベントを開催したのだ。

 

この大イベントには、MENENEオンラインの全プレイヤーが歓喜したことだろう。

 

修正データや内部システム書き換えでパッチを処理するのではなく、あえて皆の前で運営最強キャラクターを用いてパッチを討伐するというのは、これからのMENENEオンラインを更に盛り上げるためのデモンストレーションそのものであったのだろう。

 

しかし、これは完全な間違いであった。

 

俗にいう「終わりの始まり」である。

 

パッチとの戦闘が始まると、序盤から運営が大会優勝賞品アイテムである「ルーアナの鏡」(1ターンの間全攻撃・スキル無効)を乱用し、手も足も出ないパッチから一方的にスキルを奪い取った(ゲーム中そのようなスキルは存在しないためパッチリソースのチートスキルだと思われる)

そして、中盤辺りになるとパッチは丸裸も同然となり、運営側の勝利は時間の問題であった。

 

・・・かと思われたその時、運営のキャラクターに突如として異変が起こった。

 

あと1撃でパッチを討伐できるという状態で、謎のターンスキップ(何も行動せず相手ターンへ移行)を繰り返したのである。

 

最初は勝利確定故の余裕を誇示する行動にも思えたが、どうにも様子がおかしい。かれこれ10ターン以上はターンスキップしているではないか。

 

片やその間にパッチはスキル「クロノバック」(1ターン前に起こったすべての事象を元に戻す)で、徐々に失われたHPとスキルを取り戻していった。

 

そして形勢は完全に逆転した。

 

狂ったようにターンスキップを繰り返す運営キャラクターへ、すべての能力を取り戻したパッチが一方的な暴力を下す。ターンを追うごとにじわじわと0へ近づく運営のHP。

 

ライブイベントに参加している全プレイヤーの目の前で、運営は無様な敗北を晒したのである。

 

そこからのMENENEオンラインは地獄そのものであった。

 

今までは非アクティブモンスターであったパッチだが、運営キャラクターを取り込んだことにより、範囲内に侵入したプレイヤーを自発的に襲う驚異のアクティブモンスターへと変貌を遂げてしまったのである。運営が操作していたキャラクターには、チート能力が付与されていたこともあり、パッチのアクティブ範囲は実質無限で、ログインしているプレイヤーすべてがその対象となった。パッチは非戦闘区域であるはずの城下町や集落でさえも問答無用で戦闘を仕掛けてくるので、MENENEオンラインにおいて、安全と呼べるような場所は皆無となった。

 

上記内容に加え、パッチが運営を倒したことによって取り戻した「戦闘敗北=データ消失」システムを恐れたプレイヤー達はすぐさまログアウトを行った。

ほとぼりが冷めるまではログインせず、修正アップデートが入るまで大人しく待っていようと考えたのである。

しかし、パッチはそれを嘲笑うかのようにログアウト中のゲーム内においても各プレイヤーに接触を繰り返し、強制戦闘のフラグを乱立させた。

 

まさに死神の所業である。

 

その結果、ゲームにログインした瞬間、強制でパッチとの戦闘開始=データ消失という逃れようのない悲劇がプレイヤー達を襲うこととなった。

 

程なくして既存プレイヤーすべてに強制戦闘フラグを確立したパッチは、それだけでは飽き足らず、今度は新規プレイヤーのチュートリアル中にも戦闘乱入するようになり、MENENEオンライン界にプレイヤーが存在することは事実上不可能となった。

 

こうしてMENENEオンラインはサービス終了に至ったのである。

 

P・S

運営側のパッチ戦においてのターンスキップの意図・原因・詳細については、今でも元プレイヤー達の間で議論が行われているのだという。

 

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