【SS】女神「ただし、性行為を行うと死にます」
男「いてて・・ん?どこだここ」
女(・・すか)
男「?」
女(聞こえ、ますか)
男「なんだこれ。頭の中から声が聞こえる」
女(今、あなたの脳内に直接語り掛けています)
男「いや、でも、その、目の前にいるわけだし・・直接話しかけた方がいいんじゃないですか?」
女「それもそうですね」
男(何なんだこの人)
女「私は女神」
男(女神だった!)
男「女神ってなんかこう、もっと神々しいイメージだったんだけど」
女「ええ。最近は羽衣よりも黒スーツの方が受けがよろしくて」
男「はぁ・・そうですか。それより、もしかしてここって」
女「はい、お察しの通りここは異世界にあたります」
男「やっぱり!あれ?てことは現世の俺は死んじゃったんですかね?まだ20代なのに・・・」
女「それは分かりかねます。私はただここへ来た人々に説明をする係なので」
男「女神が説明係って・・それで、俺はどうしたら元の世界に戻れるんです?」
女「この世界で善行を行っていれば、それとなくヒントやお誘いが来ると、巷の女神たちの噂を聞いた知り合いがそう言っていました」
男「情報元が曖昧すぎる!!でも、善行とはいえ極端な話、日常のお手伝いとかそういうのでいいんですよね。だったら意外と楽に帰れたり・・?」
女「そうとも限りません。ここは異世界ですので、あなたの世界では存在しないモンスター等も多く生息しています」
男「おぉー!RPGみたいでなんだかワクワクしてきた!ちなみに、この世界で死んでしまった場合は・・」
女「その点は大丈夫です。あなたは並大抵のことでは死ななくなりました」
男「マジで!?よくある異世界チート物語じゃん!」
女「そう解釈していただいて結構です」
男「てことは俺、不死身の体になったんですね?」
女「いえ、あくまで死ににくいだけなので、不死身とは少し違います」
男「なるほど・・頭や心臓をつぶされたりしたら死ぬというわけですか」
女「いいえ、その際も痛みこそ感じれど死には至りません。欠損した部位も徐々に回復していきます」
男「痛みはあるのか・・・いや、でも、それって実質無敵じゃないですか!ついに俺の時代がやっt」
女「ただし、性行為を行うと死にます」
男「!?」
女「なので、どんな容姿端麗な非の打ち所がない女性が現れたとしても、一線は超えないようくれぐれも注意してください」
男「マジ、かよ・・・はぁ。」
女「え、ちょっとやだ。早速そんな目で私をみないでください」
男「もうツッコむ気力もない・・」
女「穴に突っ込むとかそんな、あなた!」
男「穴とか一言も言ってねぇ!!!」
女「一時の快楽で性を・・ぶふっw生を終わらせるつもりなんですか!?」
男「自分で言って自分で笑ってるよこの人!!」
女「まぁ、そういうわけなので。頑張ってくださいね。では!」
男「え、ちょま!」
女「応援してますよ~!」
男「もっと詳しく説明しt」
ビューン
男「うわぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
~
~どこかの森~
男「うう、なんなんだあの女神。そしてここは・・・森?」
ブブブブブブ・・
男「なんの音だ?」
ブブブブブブ・・
男「え、これって・・蜂の大群!?まぁでも今の俺は無敵だからどうとでも」
ブスッ
男「痛ってぇええええ!!!武器も何もないし!どうにもならんぞこれ!!!」
ブスブスブスッ
男「いっ!!ヤバいやばいって!!こんなに刺されたらさすがに死ぬって!!」
ズズズ
男「ぐっ、体が痺れてきた!それに呼吸もし辛い・・けど、死ぬ気は一切しない。・・・こんなの、生かさず殺さずの拷問と同じじゃないか」
ズズズズズ
男「あぁ、異世界を一瞬でも楽しそうだなんて思っていた自分が憎い。こんな能力、要らなかった・・・」
ズズ・・・
男「もういっそ死に・・」
???「待たせたな!!」
男「え?」
???「汚物は消毒だぁぁあああ!!!」
ゴォォオオオオ
???「ふぅ。大丈夫かあんた?」
男「ぁあ゛、ぁ゛りがどう、ございま゛ず」
???「まったく、この森に火炎放射器も持たずに入るなんて、自殺行為もいいとこだぜ」
男「ヴぅ・・」
???「おっと、名乗り遅れたな!私の名前はイトウ。あんたの名は?」
男「ぉどご」
イトウ「ふむ、男か。毒の影響で喋りづらいとは思うが、村で薬を飲めばそんなものすぐ直るさ」
男(いい人そうで助かった)
イトウ「しかし、よく見るとあんた結構いい顔してるな。とりあえず」
男(とりあえず?)
イトウ「やらないか」
男(あ、オワタ)
~
イトウ「村に着いたぞ・・ってさすがに意識はないか」
男「・・・」
村人「おっ?イトウさん珍しいもの担いでるね」
イトウ「ああ、森で蜂に刺されまくってるのを拾ってきてな」
村人「うわっ、これはひどい」
イトウ「だろう?生きてるのが不思議ってもんだが・・おそらく加護のおかげだろう」
村人「なるほど。加護ねぇ・・」
イトウ「まぁ、この様子だときっと明日にはケロッとしてるだろ」
村人「うむぅ・・・まぁ、お大事に。」
イトウ「おう!さて、薬買ってさっさと家に帰るか」
~翌日~
男「ふぁ!?」
イトウ「よう、おはようさん」
男「おはよう、ございます」
イトウ「調子はどうだ?」
男「あっ、え!?何ともなってない!?」
イトウ「一応飲み薬の後に塗り薬を塗っておいたんだが、それも必要なかったかもな」
男「薬・・・って!遅くなりました!!助けていただいてありがとうございます!!」
イトウ「いいよ、たまたま通りかかっただけだし」
男「あ、そういえば助けていただいた時に、その・・・やらないかって言ってませんでした?」
イトウ「ああ、言った言った。私は男を見ると見境がなくなってねぇ」
男「!?でもイトウさんって男ですよね?」
イトウ「ああ、男だ」
男「・・・」
イトウ「・・・」
男(逃げなきゃ!!!)
イトウ「落ち着けって。やるつもりなら今頃とっくにやってるよ」
男「あ、確かに」
イトウ「ちょっと話を聞かせてくれないか?」
男「実は・・・」
~
イトウ「なるほど、性行為を行うと死に、元の世界に戻るために善行ねぇ」
男「俺もよく分かってないんですけど、とりあえず善行をしまくるほかないかなって」
イトウ「オーケー。ちょうどこの村にも困ったことがあってね。よかったら手を貸してくれないか」
男「是非是非!!恩返しにもなりますし!」
イトウ「ついてきな」
~
村人「おぉー!元気になったみたいでなによりだよ」
イトウ「ああ、やはり加護ってのはすごいもんだな」
男「加護?」
村人「お前さんのその生命力のことだよ。大方女神と契約でも交わしたんだろう」
男「契約なんか・・・交わしたのかな俺」
イトウ「まぁ、ほとんど説明されなかったみたいだし、今は考えても仕方ないよな」
男「うーん・・・ん?」キョロキョロ
イトウ「それで、困ったことってのが」
男「あれ?ここの村って男の人しかいないんですか?女性が一人も見当たらないような」
イトウ「ビンゴ。困ったことってのはまさにそのことだ」
男「まさか、どこかから女性をかどわしてこいだなんて・・」
イトウ「違うわ!さらわれたんだよ、村の女たちは」
男「え!?」
イトウ「生きていることは確かだ。場所も分かっている。ただ」
男「ただ?」
イトウ「力がないと取り返せねぇんだ」
続く。
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