【SS】女神「ただし、性行為を行うと死にます」2
男「力が必要って、どういうことですか?」
イトウ「そのままの意味だ。奪われたものを取り返すには奪ったやつ以上の力が必要だってことさ」
男「なるほど。あ、もしかして女性をさらっていった相手はその、モンスターだったり・・?」
イトウ「私も詳しくは分からんが、人型である可能性が高い」
男「人型・・しかし、俺にはほとんど死なない加護があるだけで、戦闘経験なんて一切ないので力になれるかどうか」
イトウ「その点は大丈夫だ。お前は戦わなくていい」
男「え? あ!つまり、皆さんが戦っている間に俺が女性たちを救出してくればいいんですね!」
イトウ「逆だ。お前ひとりが囮になっている間に、俺たちが女を助け出す」
男「えっ」
イトウ「助けてやった命なんだから、お前に拒否権なんてないよな?」
男「いや、あの」
イトウ「大丈夫だ。女を全員取り返したらすぐに応戦に向かう。だから、それまでなんとかして耐えてくれ」
男「また痛みと恐怖に耐えないといけないのか・・・怖い」
イトウ「お前ならできるさ。それに、もし上手くいったら助けた女とワンチャンあるかもしれないんだぜ?」
男「それは本当にガチで死ぬやつなんで遠慮しておきます」
イトウ「おっと、そうだったな。まぁその時は代わりに俺がお前を」
男「いや!男女関係なくヤった時点で死んじゃうから!!」
~村はずれの廃坑~
イトウ「ここに村の女たちがいるはずだ。そして、もちろん全員生きている」
男「失礼ですが、なぜ生きていると断言できるんですか?」
イトウ「それは・・・お前はやつらが女だけを選んでさらっていったことに、疑問を感じないのか?」
男「!」
イトウ「そういうことだ」
男「じゃあ!女の人たちはみんな!」
イトウ「しっ!あそこに見張りが2人立っているのが見えるな?」
男「はい。全身真っ黒な鎧騎士が2人いますね」
イトウ「あの鎧は最高峰の鉱石から出来ていて、並大抵の攻撃じゃ壊せない」
男「・・・」
イトウ「そしてヤツらが持っているあの銀色の剣。それもまた同様だ」
男「・・・」
イトウ「あとは・・分かるな?」
男「え?すみません。全然分らないんですが」
イトウ「よし、行ってこい」
ドンッ
男「うぇぇえええええ?!」
鎧騎士「なんだ貴様は!?」
男「違うんです!俺は、その・・・女の人たちを返して欲しくて!」
鎧騎士「この無礼者が!!貴様といい、この前のやつらといいなんなんだ!!」
男「この前のやつら?」
鎧騎士「ああ、貴様以外にも今まで数多の男達が同じようなことを言ってきたが・・フフ」
男「・・まさか!?」
鎧騎士「ハッハッハ!そのまさかだ!!」
男「この・・っ!!」
鎧騎士「全員そのまま追い返してやったわ!!」
男「え?」
鎧騎士「ん?」
男「殺したとかじゃないんですか?」
鎧騎士「は?なんで殺す必要があるんだ?」
男「いや、だって普通」
鎧騎士「無駄な殺生は禁じられているからな。それに、俺自身血が流れることを好かんのだ」
男「禁じられている?誰かに命令されて女性たちをさらったんですか?」
鎧騎士「フン。誰に命令されたか貴様なんぞに話す道理はないが、しいて言うならば・・・姫だな」
男(いや、話してるし)
鎧騎士「そしてなぜ女だけをさらったのかは、こればかりは口が裂けても言えないが」
男「・・・」
鎧騎士「まぁ、女の方が比較的手先が器用で、家事・陶芸に秀でてるものが多く、そういった作業をさせるために・・」
男「あれ?モンスター繁殖とか娼婦扱いとかそういう理由じゃなかったんですね」
鎧騎士「下品なやつだな、貴様は」
男「あの、もしかして、あなたっていい人なんですか?」
鎧騎士「はぁ?」
男「話を聞いている感じだと、仕方なく、ただ命令に背けなくて従っているように思えるのですが」
鎧騎士「ああ、確かに姫の命令には逆らえない。俺は正直こんなことをしたくないというのも事実だ」
男「・・・」
鎧騎士「俺は、本当は、みんなで平和に仲良く暮らしたい・・・争いなんてなくなればいいと、そう思っている」
男(いや、さすがにいい人すぎるだろ)
鎧騎士「ただ、姫には助けていただいたご恩がある・・・だから、姫が望むことは俺の望むことにもなる。それに・・」
男「それに?」
鎧騎士「俺は姫と契約を交わしている」
男「!」
鎧騎士「偽らない、姫に逆らわない、という契約をな。もしこれを破ってしまうと・・・俺の命は終わりだ」
男「なるほど。ちなみに、その契約に期限はあったりするんですか?」
鎧騎士「この契約は一生ものだ。つまり、俺が死ぬまで有効ということになる」
男「ふーん・・・なるほどねぇ」
鎧騎士「そういうわけだ、分かっただろう。女を返すわけにはいかない。さっさとここから立ち去るんだな」
男「いや、そうは言われても。あ、ほら、あっち見てください」
鎧騎士「あぁっ!?」
ダダダダダダ
イトウ「男ー!!よくやった!!女たちは全員取り返したぞ!!中のやつら意外とショボかったわ!」
男「さっすがイトウさーん!!」
イトウ「もう少しでそっち行くから待ってろ!!」
男「はーーい!!」
鎧騎士「くっ・・・!貴様らぁああああ!!!!」
男「ちょっと落ち着ていくださいってば騎士さん!」
鎧騎士「あぁあ!?」
男「俺、思ったんですけど。その鎧の中って空ですよね?」
鎧騎士「!!」
男「隣の鎧も、廃坑の中にいる鎧たちもすべて」
鎧騎士「貴様、いつからそれを・・!?」
男「俺に考えがあります。あなたの望む、みんなが平和に過ごせるような考えが」
~
イトウ「よう、男!待たせたな!!」
男「ああ、遅かったですね。遅くて遅くて・・・あなたを殺してしまいそうです!!」
ギィンッ
イトウ「お前!?」
男「へえ、イトウさんて。剣の腕もすごいんですね」
ドンッ
イトウ「ぐっ!」
男「俺はここの騎士と話して、やっぱりあなたに味方するわけにはいかなくなりました」
イトウ「なんだと!?」
男「そういうわけなので、さっき逃がした女性たち、全員もう一度捕まえてきます」ヒュッ
イトウ「お前・・・なんでそんな」スッ
男「さぁ、なんででしょう、ねっ!!」
ガキィンッ!
イトウ「おいおい!戦闘経験なんかなかったんじゃねぇのかよ!?」
男「あぁ・・そんなこと言いましたっけ?」ギリギリ
キィンッ
イトウ「くっ、このままじゃ・・!」
男「ほらほらぁ、俺を殺す気でこないとイトウさんも女性達も皆殺しですよ?」
イトウ「クソっ!お前はどうせっ、死なないだろうがぁぁあああ!!!」
グサッ!
イトウの体格の割には細く鋭いその剣が、男の心臓を貫いた。
イトウ「なっ!?」
男「ぐっ、うぅっ・・」
イトウ「お前・・・」
男「イトウさん・・・グッジョブ、です・・ガハッ!」
イトウ「お、おい!大丈夫か!?」カランカラン
男「え、ええ。めちゃくちゃ痛いです・・・へへっ」
イトウ「こんな時に何笑ってんだよ!こんな、意味のないことしやがって!!」
男「意味、は・・あり、ます。そこの騎士さんに…聞い、て」ガクッ
イトウ「騎士だと!?」
鎧騎士「・・・」
~イトウの村~
男「いやーwやっぱ剣で心臓貫かれるって痛いっすねw」
イトウ「当たり前だろ!馬鹿かお前は!ほんと無茶しやがって」
鎧騎士「男・・・随分と大きな借りができたな」
男「いや、全然いいですよ!俺の目的は善行だし。それに、あなたはすごく優しい人だったから」
鎧騎士「・・・」
イトウ「しっかし、まさか鎧の中身は魂で、他の鎧も全部操っていただなんて思いもしなかったぜ」
鎧騎士「俺の肉体は当の昔に滅びている。魂さえあれば問題ないのだ」
イトウ「なーにが問題ないだ!意識が分散しすぎて廃坑の鎧たちは雑魚同然だったぜ?」
鎧騎士「むっ!ならば今から貴様と一騎打ちをしてやってもいいのだぞ」
イトウ「その鎧と剣以外で来るなら私にも勝ち目が!!」
男「まぁまぁ。それで、鎧の中が魂だってことに気付いたから、俺の体に乗り移って臨死体験をしてもらったわけなんだけど・・・」
イトウ「お前なぁ。あれ、最初の方絶対本気で斬りかかってきてただろ」
男「あ、バレてましたかw騎士さんの力が物凄く伝わってきて、物語の勇者とか悪役ってこんな感じなのかなぁと思ったらついついw」
鎧騎士「しかし、心臓を貫かれることによって死を感じ、感じさせ、契約を終了させるとは・・・恐れ入った」
男「思いつきだったんですけどね、上手くいったみたいでよかったです」
イトウ「女たちもすべて無傷で戻ったわけだし、めでたしだな」
男「まぁ俺の旅はまだまだ続きそうなんですけどね」
鎧騎士「そのことについてだが、俺も男についていこうと思う」
男「え!なんで!」
鎧騎士「契約が終了して行く当てがなくなった。どうせ貴様はいずれ姫のもとへと向かうのだろう?」
男「確かに、おのずとそうなっていくとは思いますが・・」
鎧騎士「俺ももう一度姫に逢いたいと思っている。だから、そこまで旅を共にしてやろうと言っているのだ」
男「いやしかし、そんな悪いというか」
鎧騎士「貴様は不死身とはいえ身を護るすべを一切持っていないだろう。俺が貴様を護ってやると言ってるんだ」
男「あなたは神か!!」
イトウ「その件についてだが、私もついていくことにした」
男「なんだって!?」
イトウ「村が世話になった分、お前にお礼がしたい」
男「イトウさん・・・」
イトウ「ということで男。さっそくだが」
男「はい」
イトウ「やらないか」
男「いやぁぁあああああああ!!!!」
続く。
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