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「夏だし、怖い話でもするか」

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僕は幼い頃より、不可思議な出来事に遭遇することが多かった。

運が悪いのかそういう体質なのかは知らないけど、ほんといい迷惑だよね。

 

そんな体験をしたところで、

いいことなんて何一つありやしないのに。

 

いや、もしいいことがあるとすればそれは、

こうしてここで他者に怖い体験を語られることくらいだと思う。

 

ちょうど今夏真っただ中で、

凄まじい猛暑に見舞われているところだし、

背筋を凍らせるようなとっておきの怖い話でもしてみようか。

 

まずは、何がいいかな。

まぁ最初だし、あまり怖くない「掴まれた足」の話でいいよね。

 

 

「掴まれた足」

 

あれは、とある夏の深夜のこと。

僕は近所で有名な心霊スポットへ、一人きりで訪れた。

何故深夜に、何故一人きりでそんな場所へ行ったのかって?

 

答えは単純。

罰ゲームだったんだ。

 

飲み会の席で、王様ゲームがあったんだけどね。

そこで王様が言ったんだ。

 

「じゃあ、8番のサトルが一人で心霊スポットに~・・あ、やべ!サトルじゃねぇ!8番!8番の人ね!」

 

そう、僕の名前はサトル。

それはさておき、なぜだろう。

僕の知ってる王様ゲームとは少し違う気がする。

 

隣の席の同僚、加奈子さんは「やったねサトル君!」とか言っていたけど、

正直何がやったのかさっぱり分からないし

どちらかというと完全にやられた側だよね。

 

まぁしかし、王様の命令は絶対なので

僕は仕方なくその命令に従うことにした。

 

というより、そうするほかなかった。

だって、その場にいた他の全員が「不正はなかった」と口を揃えてそう言ったんだから。

 

その後のお会計時に、

みんなのカバンにそっとリアルゴキブリフィギュアを忍ばせたのはまた別のお話。

 

さて、そんな経緯で心霊スポットへ訪れたわけなんだけど

やっぱり、辺りが暗いってだけで恐怖心はかなり煽られるもんだね。

心霊スポット定番の廃病院。

ここに放置されているカルテの写真を撮って、後日みんなに見せることがその証明になるらしい。

 

ふぅ。

こんなこと、さっさと終わらせよう。

 

割れたガラスの上を歩きながら、

「人類最大の発明は意外と靴なんじゃないかな」なんて考えていると、足元より目的のものがライトの光に照らされた。

 

軽く腰を曲げ、汚れたカルテを手に取ってみる。

内容を読み取ろうとしてみたけど、

文字はドイツ語で達筆に書かれていたために読解することができなかった。

 

まぁ、いいか。

とりあえず写真を撮ってさっさと帰ろう。

 

パシャッ

 

心霊スポットで撮った写真は

「後日確認すると撮れていなかった」と真偽が定かではない噂があるので、一応その場で確認してみることにした。

 

うん。ちゃんと撮れてる。

ハッキリと映っているよね。

 

顔面蒼白の血濡れた女が。

 

この写真を見た瞬間、僕の脳内はお笑い芸人のクールポコで支配されていた。

 

「冴えない男が心霊写真を撮ったって言ってるんですよぉ~」

「なぁーにぃー!?やっちまったなぁ!!」

「男は黙って!」

「写生!!」

「男は黙って!」

「射精!!」

 

 

 

・・フフッ、シャセイ

 

背後から響く氷のように冷たく鋭い笑い声で、僕は我にかえった。

これは絶対に何かいる。

決して振り向いてはダメだ。

目線を合わせた時点で何かしらが終わってしまうのは確実だろう。

 

そうなる前に、早く帰ろう。

目的は達成したんだし、もうあとは帰るだけ。

そう、ただ帰るだけでいい・・・

 

なのに、肝心の出口は僕の向いている方向とは正反対の位置にある。

そして、背後には依然として「何か」がいる。

 

完全に詰んでしまった状況。

どうすることもできない。

 

「まだ加奈子さんがゴキブリを見た時の顔を拝んでいないのに、ここで死ぬのかぁ」

 

緊急時程どうでもいいことを思考するとは言うけれど、

その直後、僕の脳内に一筋の光が差し込んだ。

 

そうだ、ピボットターンがあるじゃないか!

 

ピボットターンとは片足を軸にして90度回るという、バスケではお馴染みのテクニックだ。

 

スッ

 

焦ったせいか軸足が少し動いてしまい、若干トラベリング気味ではあったけれど、

なんとか背後にいるであろう女性を振り切ることができた。

 

さぁ、これでやっと出口に・・

 

しかし、ことはそう簡単にはいかなかった。

なんと、今度は頬のすぐそばから不気味な声が漂ってきたのだ。

それはもう、痛いくらいに冷たい吐息ととともに。

 

 

ユルサナイ・・ゼッタイニ。

 

 

・・・ヤッパユルスカモ。

 

 

これはヤバい。

何がヤバいって、結局許すのか許さないのかが全然ハッキリしていない。

相手の意思があまりに曖昧すぎる。

 

それに、いくら視線を側面に移さず走ったとしても、

このままでは嫌でも横目でヤツの姿を捉えてしまう。

かといって走りながら目を瞑るなんて自殺行為だし、今度こそ本当に詰んでしまった。

 

・・・

 

いや、詰んではいなかった。

僕は更なるこの土壇場で「半目で全力疾走」という荒業を成し遂げたのだ。

 

とはいえ、これでは焼け石に豚。馬の耳に目薬。

正面に回り込まれるのも時間の問題だった。

 

しかし、決して足を止める訳にはいかない。

足が止まるイコール命の終わりなのだから。

僕は無我夢中で出口に向かって走った。

 

なんなんだこいつは。

オバケ

 

僕が何をしたって言うんだ!

カルテトッタ

 

そもそも許してくれるのかくれないのかどっちなんだよ!!

ドッチナンダイ

 

クソっ!さっきから合いの手みたいにテンポよく囁きやがって!!

この化け物め!!

 

そう叫んだ瞬間、

周囲を取り巻く空気がより重く、冷たく変わった気がした。

 

 

ゼッタイニ・・・ユルスナイ!

 

 

あまりの怒りに我を失ってしまったのか

ついに許すと許さないが混じってしまった曖昧過ぎる単語を発するアイツ。

それと同時に、やっと外への出口が見えてきた。

 

ここまで来たら、あとは車に乗って・・・

 

ガシッ

 

突如として右足に冷たい衝撃が走る。

まるで氷でも押し当てられているような感覚。

 

どうやら足を掴まれてしまったらしい。

 

全力疾走途中に急に足を掴まれてしまった僕は、

成すすべもなくそのまま床へとダイブすることになった。

そして顔を上げると

 

 

般若のような形相をした、顔面血まみれの女の姿がそこに。

 

 

・・・ああ、終わった。

もうこれはさすがにオワコン。

 

 

・・・

 

 

いや、終わらなかった。

 

よくある体験談や映画ならば、ここで意識が飛んで終わってしまうのだろうけど、

残念ながら僕の意識ははっきりとしていて、気絶する気配なんて一切もなかった。

 

現実はこんなもんだよね。

都合のいいところで簡単に気絶させてくれるわけなんて・・

 

ゴッ

 

後頭部に鈍い衝撃が走る。

いや、恐怖で気絶しないからってそういう物理的なのは反則じゃない?

仮にも幽霊なんだからさ。

もっとこう、別のやり方というか・・・

 

僕は正当な不満と疑問を抱きながら、

理不尽な仕打ちによって意識を失ってしまった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

次に目を覚ました時は、日の登る早朝だった。

辺りではスズメがちゅんちゅんと鳴いている。

 

・・僕は、助かったのか?

 

そう思い、右足を見てみると・・・

 

気絶前と同じくして青白い手が僕の足首を掴んでいた。

 

いや、いつまで足掴んでんねん!!

 

僕は、的確なツッコミを入れつつ掴まれていた手を払いのけ

廃病院を後にした。

 

後日、みんなに廃病院での出来事を話したけど、まったくもって信じてもらえなかった。

証拠写真はただの真っ暗な写真になってるし、

本当になんだったんだろう、あの女。

 

ピピッ

 

不意にスマホが鳴った。

非通知からの着信だったけど直感で分かった。

絶対あいつだ。

 

若干イライラしながらも電話に出てみる。

 

何だよ!?

 

・・・ユルス

 

ピッ

 

そう一言残して、電話は切れてしまった。

よく分からないけど、なんかとりあえず許されたっぽい。

 

そういうわけなので、一応これでめでたしめでたし、なんだと思う。

 

いや、知らんけど。

 

 

以上が「掴まれた足」のお話だったけどどうだった?

最初だからあまり怖くなかったと思うけど、世の中不思議なこともあるもんだね。

 

じゃあ次はもう少し怖い「丑三つ時のシャワー」を話そうかな。

 

 

・・・続く

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